1.オーナーと時計の関係性
オーナーのO様は起業家。しかもいくつもの事業を立ち上げていくイニシャルアントレプレナー(連続起業家)と呼ばれる人物です。ITとマーケティングを知り尽くし、その上でセンスあふれるO様の時計はロレックスのGMTマスターIIでした。
平成の時代に愛用していて、その後、なんとなく放置。不動となりさらに放置して数年。ウォッチガレージを知り、ふと「あのロレックス、またしてみようかな」と思ったそうです。そしてウォッチガレージにO様のロレックスGMTマスターIIが届きました。
2.時計の状況とオーバーホールメニュー
O様のロレックスGMTマスターIIは典型的な状況でした。この時計に限らず、多くの機械式時計は以下のようなプロセスで機能不全になっていきます。
フェーズ1.油脂類の劣化
機械式時計の内部は多くのパーツ(歯車やゼンマイなど)で成り立っており、これらの滑りを良くし摩耗を低減する目的で油脂(機械油)が塗布されています。これらの油脂類が年月を経て劣化して凝固したり硬くなることでパーツの動きが悪くなります。またこれが原因でパーツが摩耗して噛み合わせが悪くなることもあります。
フェーズ2.パッキン類の劣化
時計の大敵は水、あるいは湿気です。そのためほぼ全ての時計には(程度の差はあっても)防水機能があります。(まれに全く防水機能のない時計もあります)防水機能はゴム(樹脂)製のパッキンが担います。一般的には裏蓋、リューズにパッキンが入っています。クロノグラフなどの多機能時計の場合はもっと多くのパッキンが用いられます。樹脂は必ず経年劣化しますので、防水性能が落ちて水が侵入し、内部が錆びてしまうことになります。
フェーズ3.重要なパーツの不全、破断等の発生
ここまで来てしまうと時計を動かしている心臓部のパーツに影響が出てきます。それは動力源であるゼンマイ、ヒゲゼンマイです。時計の動力は金属で作られたバネから生み出されます。そのバネが錆びたり動きが悪くなったりすると、時計の針がおかしな動きをしたりします。そしてゼンマイ、ヒゲゼンマイが劣化して破断(折れたり、割れたり)するととうとう時計は不動になってしまうわけです。
O様のロレックスGMTマスターIIもこのフェーズ3に来てしまっており、結果、不動となっていました。ウォッチガレージで行った処置は以下の通りです。
作業1.分解洗浄
時計を分解し、パーツを洗浄して再度組み立てます。その際、油脂類を補います。
作業2.パーツの交換
ゼンマイとパッキン類を交換します。
3.オーバーホールのお値段
O様のロレックスGMTマスターIIのオーバーホール料金は以下の通りです。正規ディーラーでのお見積りと比較してみてください。
基本料金 | ¥39,000 |
パーツ交換 | ¥6,400 |
外装磨き・コーティング | なし |
合計(税抜) | ¥45,400 |
4.修理とオーバーホール:O様のロレックスの場合
熟練の時計技師による作業によってO様のロレックスGMTマスターIIは本来の機能を取り戻しました。一つこぼれ話を。ウォッチガレージでは修理/オーバーホール時に外装(ケース、ブレスレット)の磨き(ポリッシュ)とガラスコーティングをお勧めしています。これを施すと本当にピカピカの新品のように蘇るからです。
でもO様は「外装仕上げ」は要らない、とおっしゃいました。最近買ったみたいに思われたくない、とおっしゃるのです。
なるほど。色々と勉強になります。どなたでもピカピカがいいわけじゃないのですね。(笑)それでもO様、出来上がった時計を見て「すげー、ピカピカだぁ」と大喜びされていました。お客様に喜んで頂けると大変嬉しいです。
ウォッチガレージは時計を愛する人のための時計を愛する人による時計修理専門店です。腕時計に果てしない浪漫を感じる私たちに、お客様の大切な時計をお預けくださいませ。
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